11月護摩のお話
今日は雲ひとつない天気です。今晩の満月はきっとすばらしいと思います。どうぞ皆さん今夜は満月に向かってお不動様をイメージして思いを込めて念じて下さい。
青蓮院のお庭のもみじも少し紅葉してきました。夜のライトアップにもお出かけ下さい。
日々様々なメデイアが報じていて良くご承知の通り、目下の経済状況は世界的な規模の金融恐慌となってきました。
日本はバブル崩壊後、破綻する金融機関に国民の税金をつぎ込み、辛酸を舐めてようやく泥沼から立ち上がった所でした。その教訓が覚めやらないことが幸いし、今回世界中の金融機関が被った証券化されたリスクの高い投資による被害を、結果的に最小限に食い止められたと思います。
従って事の起こりに対して対岸の火事を見るような、云わばひとごとのような思い、自分達は健全で問題ないとの認識が産業界全体にあったように思います。
しかしながらアメリカの不始末とは云え、巨大な資金の収縮は単なるマネーゲームの失敗に留まらずお金が回らなくなることは、実体経済が回らなくなることだということを、否が応でも知らされることとなっています。
しかも1929年と比べて現在は比較にならないほど世界経済が一体でありいくら自分が健全であっても大きな波の前で如何ともしがたく、無力だということを痛感します。
オバマさんが選ばれて大きな期待が掛けられていますが、この危機は彼によっても対処できないのではないか、並大抵の事態でないことを市場が示しました。
アメリカのために何故こんな目に遭わなくてはならないのか。日本はもっともっと強くアメリカに主張しなければならないと思います。さらに、その内アメリカの不始末にも拘わらず、いずれこの危機を打開するため日本への重い負担が要求されてくる恐れは充分にありましょう。そのためにも云うべきことを発言しておかなければと思うのです。
そもそもこの金融破綻の根本にあるものは何でしょうか。
まさに仏教で説いている、人の心の煩悩であると思います。
煩悩の中心は貪(とん、むさぼり)、瞋(じん、しん、いかり)、痴、です。
この内のむさぼりの人間の性こそが、今回の世界の危機のもとだと思います。つまり自分さえ良ければ良い、人の苦しみが自分の利益になる、自分だけが食い尽くすことを、お金を道具にして狂奔した結果だといえましょう。
本来お金が生産や労働の対価としての役割であった時は、お金は地に着いたもので、実態経済そのものを表していました。しかしながら、お金そのものが取引の対象となったところにこの問題を深刻化させた最大の要因があったと思います。そしてそのお金をむさぼりあったことが・・・・。
お不動様はこの人間の性の避けがたいむさぼりの心を焼き尽くす力をもっています。人は弱く、よほど心を強く保たないとむさぼりの心に負けてしまいます。お不動様への信仰によってこの弱い心に打ち勝てるのだと思います。
しかしながらもう事態はすでに起きてしまい、被害が甚大に現れているのですから、今どのように我々は対処したらよいでしょうか。
それぞれ皆さんの置かれた状況は分かりませんが、多かれ少なかれこの荒波に誰しも左右させられることは避けられません。今最良の対処方法は先月も申し上げましたが、お不動様を信じ、じっと耐え偲ぶことです。ご自分にとって予想される、ありとあらゆる悪い事態を想定して、地道に対処していくことをお心がけいただきたいと思います。
そしてお不動様を常に信じ、思いを込めることによって祈りの中から良い導きの糸口をつかむことが出来るように思います。
雲のひとかけらもない今宵の満月を拝すると、人間のこまごまとした営みが実にはかなく、いかに小さいものかとつくづく感じます。
その上でさらに深く強く、満月を感じ、お不動様と一体となることを思うことで、はかなく、小さい自分ではあっても、体の中に問題に対処できる大きな力をいただくことができると思います。
慈晃 拝。
カテゴリ: 門主のお話 | 2008年11月14日 | コメント(1) | No Trackbacks
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