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10月護摩のお話

10月護摩のお話

今日は暑い位の日になりました。たくさんの方にお参りいただきありがとうございます。
今年のように、夏が極めて暑く、もし11月がぐっと冷え込むと、紅葉は最高の美しさになると思います。
楽しみですね。

今日は フジコ・ヘミングさんのお話をしたいと思います。

 ご承知の方も多いと思いますが、フジコさんはベルリンでスウェーデン人の父親と、音楽留学されていた日本人の母親との間に生まれ、その後両親と日本に帰国したが、最初はうまく行っていたご夫婦の仲が離れ、結局父親は妻子を捨てて本国に帰ってしまう。
 母親はピアノ教師をしながら貧乏の中、彼女はピアノを母親から厳しく教えられて育つ。
 音大を卒業後ドイツへ留学を希望するが、母親がスウェーデン国籍の手続きを怠っていたため日本国籍もなく、難民救済措置でドイツ入国が許された。
 母親からの僅かな仕送りで極貧の中で卒業後、やっとバーンスタインに認められてウイーンでリサイタルを開催できることになったが、リサイタル1週間前に、貧乏なため、暖房もなく極寒の中で風邪をこじらせ中耳炎となり、日本にいた時、中耳炎で片耳の聴力を失っていたが、ここで他方の耳も完全に聞こえなくなるという突然の不幸にみまわれる。リサイタルは中止の已む無きに至り、失意と絶望の中、父親のいるスウェーデンに行くが、ここでも父親に見放され会うこともできず、孤独と貧乏と悲しみと闘いながらピアノを諦めず、ピアノ教師で生計をたてられてきた。
 1995年母親の死後日本に帰国、1999年にNHKでその数奇な生涯と豊かな才能が放送されて反響を呼び、初めてクラシックのCDで2百万枚を売り上げて、いささか遅いスタートであったが、一躍桧舞台登場となった。
 その後10年を経て人気は益々高く、感動を呼ぶ演奏に多くのフジコ ファンがいる。

 この度PHP研究所から出版された、『希望の力』子供達に贈る、勇気と希望のことば。フジコヘミング 
をいただきました。仏教に通じる良い言葉がたくさん書かれていましたので皆さんにお伝えしようと思います。

子供達に贈る、とありますが我々大人へのメッセージでもあると思いました。

その中からの引用です。

「挫折」
 不幸や悲劇は突然やって来るものね。
 ウイーンでのリサイタルが、あと一週間後に迫っていた日、暖房もない寒い部屋で暮らしていた私は風邪を
引き、それが原因で耳が聞こえなくなってしまった。・・・・中略・・・最高のチャンスを逃してしまい、毎日
泣いて過した。悪魔のせいだ。もう終りだと思った。・・・中略・・・私の人生はこの風邪のせいで狂って
しまった。あのリサイタルが成功していればと思う。誰にも不幸はあり、全部いいことばかりの人はいない。
だから大事なことは、失敗や不幸に負けず、どう乗り越えて行くかね。私の場合は、ただ正直にピアノを弾き続けてきた。
 人生には冷たい雨や強い風の日もある。試験に落ちる、病気になる、事故に遭う、家族が死ぬ、、、でも、
泣いても笑っても同じ一日なんだから、嫌なことはさっさと忘れて、明日に向かってもう一度立ち上がることよ。

 「努力していれば、チャンスはやって来る。だから、いつ来てもいいようにしておくことね。チャンス
  は人を選ぶの。夢ばかり見ていて努力しない人には、けっして、チャンスはやってこない。」

 「貧乏しても、卑屈になったり、人を羨んだりしてはだめね。心まで貧乏になってしまうから。」

 「失敗を恐れて、挑戦しない人は魅力がないわ。やってみなければわからないんだから。」

 「明日が幸せになるかどうかは、自分の努力しだい。あなたの幸せは、あなたの心の持ち方で決まります。」

 苦労に苦労を重ね、人からいじめられ、不幸な目にあってきた彼女ですが、世界中の貧しい子供達や、捨てられた動物達、弱いものを思う優しい人になって下さい。私はピアノで応援します。 とこの本の中に書かれています。
 過酷な境遇にあっても彼女は暖かい仏様の心をもち続けて来られたんですね。

 仏教で説いている「慈悲」。人のために自分の全てを捧げることですが、彼女の暖かい仏様の心が、演奏
となって人々に感動を呼ぶのだと思います。

カテゴリ: 門主のお話 | 2010年10月23日 | コメント(0) | No Trackbacks

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