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今日はスーパームーンです。約18年に一度の周期でめぐってくるそうですが、月が地球を、だえん状に回っているため、月が最も地球に近づいた時と、満月の周期が重なる時点をスーパームーンといいます。
なんと月の大きさが一番遠のいた時と比べて14%も大きく見え、明るさは30%強くなるそうです。
もちろん月の引力の強さも増す訳です。
以前からお話ししていますように、満月の月の及ぼす影響は極めて大きいのですが、その月の力を上手に利用してきたのが密教でありまして、私が青蓮院に入り満月の日を月例のお護摩の日に変更してから、すでに13年目を迎えています。
スーパームーンは約18年周期ですが、昨年の3月19日もそうだったのです。なんと1年足らずで続くことは異例です。俗説ですが、スーパームーンには地震とか、天変地異が起き易いとの説もあり、昨年の3月11日はスーパームーンの応答日ではありませんが、近い日ですので、地震発生に月の引力の見えざる大きな力が関わっていたのかも知れません。
この前起きた関越自動車道でのバス事故。だんだんに色々なことが見えてきました。
そのことで、感じたことをお話しします。
バスツアーは安くなくては成り立たない、過当競争の世界です。
ツアー会社は乗客の安全は二の次、頭にあるのは経営のことばかり。
バス会社も孫受けで、中間業者が紹介料をとり、実際の運転手は中国人で自ら違法な白バスを運営。
どこが責任をとるのか、被害を受けた方々は、やり場のない怒りをお持ちのことと思います。
この背景には社会の異常なまでの、安売り競争、長期にわたる超円高、そしてデフレスパイラルと経済の閉塞感があると思います。
この円高とデフレの流れを変えられない無能な政府と金融経済官僚の存在もあると思います。
利用者は安ければありがたいが、その奥に大きな皺寄せがあることを思うと、悲しさと空しさを感じます。
今回の東日本大震災で世界中の人が整然と並んで救援物資を受け渡しする姿に、そして原発被災地や、当日の大都会東京で暴動や商店の破壊略奪が起きない日本人の姿に驚き、そして惜しみない賞賛を受けたことはご承知の通りです。
このような日本人の国民性はどのようにして形成されたのでしょうか。
有史以来日本は島国で他国の侵略を受けず、山紫水明の恵まれた四季の移ろいの恵みを受け自然に感謝し、一方で、狭矮で不足な国土であることから、足るを知ることを知らされ、つつましく、勤勉に、そして真面目で自然に対して率直であることが培われたと思います。
さらに時々襲う、台風や地震、火山の噴火といった自然災害の苦しみに耐え、その中から再生する活力を持つ粘り強い底力を併せ持ったのだと思います。
そして、この日本人の培ってきた精神力を、私は仏教の教えが背後から支えてきたと思います。
特定のこの事故でなく、社会の多くの分野で、日本人の固有に有していた、つつましさ、真面目、勤勉さ、足るを知る、人に迷惑をかけない、等とは異なる価値観。すなわち 大量に、安く、便利に、使い捨て、速く、楽しく、人を押しのけても自分だけ良ければ、あるいは責任回避といった、戦後の価値観に我々がどっぷりと浸かってしまっていることを、この事故から知らされたと、思うのです。
社会の全ての仕組みが、怒涛のようにその方向に固まっていくと思います。
そして長い間には、それが日本人の精神性に変わってしまうかもしれません。
しかし私は震災で表れた、日本の精神性を、大切にして行きたい。
それは仏教の教えが背後にあると思うからです。
慈晃 拝
カテゴリ: 門主のお話 | 2012年05月06日 | コメント(1) | No Trackbacks
例年であれば、桜満開のところ、寒いですね。比叡山では一時、真冬のように、雪が舞っていました。
私は昨日まで4日から11日まで行われている比叡山での、御修法に参勤してまいりました。本来であれば、下山できないのですが、今日のお護摩のためお許しをいただいてまいりました。
天台宗では、平安時代から伝えるこの大法要を毎年お勤めいたします。
国家の繁栄と皇室の安寧を祈り、声明といってお経に節をつけて唱え、一日3座、計21ヶ座の密教法要です。
天台宗の高僧(私を除き)19人が、精進潔斎、祈りを奉げるのですが、今年のご本尊は三千院に伝わる七仏薬師法です。
4年に一度青蓮院のご本尊の大法要も順番で回ってきます。
一般には親しくお薬師さんといっていますが正式には薬師瑠璃光如来といって、東方浄瑠璃世界にいらっしゃる仏様で、我々のありとあらゆる苦しみ、苦悩をお救いいただき、幸せと限りない満足を与えていただける仏様です。
比叡山根本中堂のご本尊もお薬師さんです。
国の繁栄、皇室の安寧を祈り、震災の復興、原発事故の早期収束、脱原発を祈願してまいりました。
さらには今日お集まりの青蓮院にご縁あってお参りの皆様のことを思い浮かべまして、それぞれの皆様の苦が除かれますよう、お心が少しでも安楽になられますように念じてまいりました。
もともと人間は生まれてから死ぬまで、苦の連続であるとお釈迦様が説かれました。
生きること、老い、病い、そして死の恐怖。愛する人と共にできない苦。嫌いな人と付き合わなければならない苦、求めれば求めるほど得られない苦。
この身の、そしてこの世は一切が苦であると。
その苦の根源が、煩悩。つまり自己保存の本能にもとずくもので、これを取り除くことができないのがさらに苦である。
こうなりたいと願い、一生懸命努力をして、いくら頑張っても、自分の力の非力さをつくづくと思い知らされることがどんなに多いことでしょうか。
その苦しみを救い、大きな道を示していただけるのが、仏様でありますし、お不動様です。
そのお力に身を委ねること。そこに救いがあり、安楽と満足がもたらされるのだと思います。
苦しみと戦えば、苦しみに押しつぶされてしまいます。
慈晃拝。
カテゴリ: 門主のお話 | 2012年04月07日 | コメント(1) | No Trackbacks
3月に入り急に春らしくなりましたね。
昨日、一昨日と満月に近い月夜でした。
お寺の境内は暗いので、月明かりがすごく明るく感じます。
東日本大震災から1年。もう直ぐ3月11日です。
3月11日、午後2時46分、亡くなられた方の追悼と、被災された方の復興を祈願して、近畿36不動尊霊場会 同 役行者霊場札所会、合同の柴燈護摩供を大阪埠頭舞洲アイランドで厳修します。
青蓮院から、ご予約の皆さんはバスでご一緒に向かいます。
この1年被災された方々のお苦しみは筆舌に尽くせないと思います。
地震、津波、そしてあの原発事故。
ボランテイアが延べ100万人。義捐金が5000億円を越えたとの報道がありました。
集計に入らない人の数やお金を考えると本当に日本中、世界中から多くの支援が差し伸べられていますが、復旧は困難を極め、放射能との戦いは30年とか、気の遠くなることです。
これは見開き2ページの新聞の写真です。
3月6日付けで、環境省が広告したものです。約10m程の高さの災害廃棄物の壁が続いている石巻市の写真です。
廃棄物は通常の量の11年分から19年分で、緊急的に架設焼却炉を作り、24時間連続運転をしていても間に合わず、全国にその処理の協力を呼びかける内容の広告です。
しかし受け入れ自治体は、放射能の被爆を恐れて受け入れが進んでいないことは別の報道で知らされています。
被災地の苦しみは十二分に分かっていても、自分達の安全を犠牲にしてまで協力はできないという本音の表れです。
お寺の職員の娘さんが千葉の我孫子に新居を建てて1週間後、地震がおきました。
我孫子は放射能の数値が高く、所謂ホットスポット。産まれたばかりの幼児への汚染を恐れて京都の実家に直ぐに避難して未だに帰れないとのことです。
もちろん自主避難ですから、一切費用は補償されないのですが、このほんの一例を始めとして日本中に振りまいている迷惑と被害は想像を絶します。
原発が安い電気ということかもしれませんが、このことだけでもお金に換算できない極めて高い電気だと思います。
現実には被害の補償。放射能徐染費用。事故の完全収束費用。既存原発の補強。等々全ての費用を合計すれば、恐らく反って割高かもしれません。
宗教界は殆んど全ての宗派が、宗議会で脱原発の決議をしました。
しかし今のところ、具体的な活動をしている分けではありません。
私は、政治的に中立な宗教界(公明党は例外ですが)が手をたずさえて、脱原発に向けた国民的な運動をすすめていく時であると思っています。
仏教は自分のことより、人のために何ができるか。が教えの根幹にあります。
その意味で政教分離という教条を越えた道を開くことに何等迷いを感じることはないと思います。
日進月歩の科学技術の進歩。日本の先端技術の開発能力をもってすれば、そして国家の存亡をかけて、国をあげて取り組めば、原発に代わる安全で安価な発電の開発は可能になると思います。
そしてその成果を外国に売って世界中から、原発を駆逐できることにもなります。
仮に脱原発を日本だけが単独で進めた場合、日本の心配は無くなっても、もし中国で第二の福島が起きたら、風下の日本は全ての機能が麻痺するのではないでしょうか。
中国の新幹線の事故を思い起こすと、起こり得ることと考えなければならないと思います。
ですから、原発より安くて安全な発電方法の開発に国をあげて邁進しなければ、私達に平安はないかもしれないのです。
今一生懸命進めている、東山山頂の将軍塚の大護摩堂の建設後、仏教が積極的に現代社会のかかえる問題の解決に向けた活動を、私はその場所から発信していきたいと思っています。
強い力をお持ちの青不動明王にお参りいただき、それぞれ皆さんの諸願成就を念じていただくことに加え、3月11日を迎えるに当たって、このようなことにも思いを込めて今日の護摩供で願っていただきたいと思います。
慈晃拝。
カテゴリ: 門主のお話 | 2012年03月08日 | コメント(1) | No Trackbacks
朝は、晴れておりましたが、今は雪がちらついています。
2月の満月護摩をお勤めします。
最初にご案内をしました。
3月11日に東日本大震災で亡くなられた方の追悼と、復興を祈念するため、大柴燈護摩供を、近畿36不動尊霊場会と役行者霊蹟札所会、合同で、大阪の舞洲スポーツアイランドで行います。
午後2時開式。入場は無料です。雨天決行。2時46分点火。お申し込み自由ですが、お炊き上げの護摩木代(500円)は全額義捐金として現地へお送りします。
各山の山主または僧侶66人が出仕の他、諸役の行者が所作を行い、火柱も高く燃え上がり追悼と復興に向けて祈りをささげます。
66寺の内訳は各霊場会が36寺あり、重なる6寺があるため総寺院数が66寺となります。
どうぞお気軽にご参加ください。
豪雪により全国各地でお困りの方がたくさんいらっしゃり大変お気の毒です。
東日本大震災の被災の方々も雪や寒さでご不自由のこととお察しします。
パナソニックが7800億円の赤字。トヨタは前期2兆円の黒字から1500億円の赤字転落見込みとのこと。
円高の影響がいよいよ深刻になってきました。
輸出産業が軒並み赤字、税収は当然ガタガタと減って、消費税を幾ら増税しても、このままでは日本は沈没するのでは。
その上デフレ。
日本は100円で買えるものが益々安く買えるようになり、アメリカはいままで1ドルで買えていたものが買えない。
このデフレ、物を買う側には都合がいいが、ものを生産し売る側には極めて不利。
物が安くなったからといってそれ以上に消費が増大する訳ではなく、結局全体では経済は縮小沈滞。
ゼロ金利の時代が長すぎて、お金がだぶつき、行き場がない。だぶついたお金で銀行は国債を買うしかない。
このだぶついたお金が、世界で一番の国債依存の日本財政を支えている。
もうどうしようもない苦るしみの極みだと思います。
天台宗の開祖 伝教大師最澄は19歳で比叡山に上り、修行に入ります。
その折、書き記した「願文」が残されています。
漢文の簡潔な文章ですが、その決意表明は壮絶なまでの気迫に満ち、その若さでよくぞここまでと驚き且つ敬服するところです。
その出だしの文は、悠々たる三界は純ら(もっぱら)苦にして安きこと無く・・・・とあり
はるか限りないこの世界は、ただ苦しみばかりで安らかなことは無い。と書き出され今も昔も人の営みに変わりはないのです。
そして自分は愚の中の極愚、狂の中の極狂、塵禿の有情、(じんとく=ごみのような外見だけの僧侶)(有情=人)
底下の最澄(ていげのさいちょう)、だとしています。
仏の知恵で衆生を救うレベルからすれば、自分は愚かで狂っていて、最低以下のどうしようもない存在であると、心の底から感じられたことがほとばしっていると思います。
願文ではそれから、仏の知恵を得るまでは全ての現世の冥利を受けず、仏の知恵を得たならば、全てを衆生にささげるとされています。
19歳の若き最澄の決意表明です。
この苦しみの現世。日本全体もそうですが、個々の皆さんの日々の営みに覆いかぶさる苦しみを救う道。
最澄は自ら仏の知恵を得て、多くの人々の苦しみを救いたいと願いました。
私は最澄とは比較にならない、底下のさらに下の下であります。
私が皆様のためにできることは一心にお不動様に祈り、救いをいただき、ご加護をいただき、お導きいただくことです。
皆様と共に祈りたいと思います。
慈晃 拝
カテゴリ: 門主のお話 | 2012年02月08日 | コメント(0) | No Trackbacks
平成24年の初満月護摩をお勤めしました。
年が改まりましたが、世界の状況に変わりはなく、極めて厳しい状況が続いています。
振り返れば昨年は最悪の年でした。
東日本大震災、原発の事故、台風被害、タイの水害、ギリシャ、スペインに発するヨーロッパの金融不安。
ドルの信認の著しい低下、未曾有の円高。世界中が行き詰り、出口が見えない不気味さ。年が改まっても状況は全く変わらないばかりか、更に悪化すると予想する経営者が多く、心配が絶えません。
さらに震災と原発事故からの復興には途方も無い年月を要すること、このような激変の年を少なくとも私は経験していません。
しかも現在、政治に力がなく、党利党略の明け暮れ、真に日本の将来を見据えた長期的視野の欠如。
特に円高に対する危機感の欠如は著しく、既に事態は当たり前のようになりつつあることが恐ろしい。
タイの水害であれほどに日本の企業が海外に流出していることを思い知らされましたが、この円高で産業の空洞化は一層進むと思われます。近い将来日本の経済基盤は根底から揺らいでいくのでは。
世界に対し、ただ従順にこの事態を受け入れる日本の政治家。
一方で橋下さんが大阪市長戦の最中、既存の全ての政党が反橋下であったにも拘わらず、当選後は、「てのひら」を返して支持にまわる定見の無さ。日本の政党とはこんなにもお粗末なのか。
終戦後の窮乏に近い危機的状況に、今の日本はあると思います。
この事態から脱却するのは、政治家や政府まかせでなく、戦後の復興を果たしたあの凄まじい情熱と力を、国民が再び蘇らせる以外道はないと思います。
それに加えることは青不動尊のお力をいただくことです。
東山山頂に、旧武徳殿「平安道場」の木造大建築を移築再建し青不動大護摩堂を建立することは、単に建物の保存ではありません。
その場から仏教の教えが現実の世に具体的なよりどころとなるよう発信の拠点として行くことが、本来の願いであります。
多くの国民が脱原発の思いを共有しているだけで、なす術がないのではないでしょうか。
日本の将来は党利党略や、政治家に任せておけない段階に来ているように思います。
そして様々な利害を越えて活動できるのは、宗教界ではないかと考えるようになりました。
将来そのような活動の拠点に、例えば、脱原発の国民運動の拠点に青不動大護摩堂が役割をはたしていければと思っています。
今日の初護摩。
ご参拝の皆様の今年の願いを成就するため、しっかりとお勤めいたしました。
今夜の京都の満月すばらしくきれいです。
慈晃 拝
カテゴリ: 門主のお話 | 2012年01月09日 | コメント(2) | No Trackbacks
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